20代の頃にはまった、あてのない週末ビジネスホテル泊一人旅

20代前半、会社と自宅の往復の日々

私は旅が好きで20代の頃に25カ国程を旅した。

海外旅行に限らず国内旅行も好きだし、単純に生活圏内から離れた遠い所へ行くだけでワクワクしてしまう。

そんな私が20代前半の若手社会人だった頃、週末に家から離れた土地へ行き、安いビジネスホテルに泊まるという旅にはまった時期があった。

大学を卒業した私は、東京の出版社に入社し編集者としてのキャリアをスタートした。そこで海外旅行情報誌の編集の仕事をしていたのだが、要領よく仕事を進められない私は毎月70時間程度の残業をしていた。

バタバタと日々ストレスとプレッシャーを感じながら22時まで仕事をし、時には帰り道のコンビニで買った肉まんを歩きながら食べて晩ごはんを済ませることもあった。

そうしてようやく金曜が終わり週末を迎える。特に予定のない週末だ。

そんな時、私はたびたび東京を離れ北関東へと向かう電車に乗ってあてのない旅をした。

 

常磐線に乗り込み、いわき市へ

土曜日の朝は普段通りかそれよりも少し早い時間に起きて、1泊2日分の荷物をバッグに入れて家を出た。

上野駅まで行き、常磐線や高崎線、宇都宮線などの北へと向かう電車に乗る。とにかくここではないどこかへ行き、着いた先で宿を探して泊まるのだ。

列車が都心を離れ、徐々に田園風景が広がっていくのを見るのが好きだった。退屈しないようにいつも文庫本や新書を1~2冊持っていった。

ある時、私は福島県いわき市へと向かった。途中で常磐線の大津港駅で降り、五浦海岸にある天心記念五浦美術館を訪れた。

私は美術館や博物館が好きだ。展示物を見ることだけでなく、美術館や博物館は建物自体が面白いし、大抵くつろげるラウンジが設けられている。そこのソファに座って建築家の設計意図を想像しながら、景色や建物内部を眺めることが好きなのだ。

今から15年も前なので記憶があやふやだが、天心記念五浦美術館は大窓から太平洋が眺められるスペースがあり、展示空間とのコントラストが明快で面白い建物であった。

その後に六角堂を見て、五浦観光ホテル別館で日帰り入浴を楽しむと日が暮れた。

 

ビジネスホテルはシェルターのような場所

大津港駅に戻り、再び常磐線に乗って6駅ほど先のいわき駅へと向かった。

いわき駅前に着くと、近くの安いビジネスホテルに飛び込み、無事にチェックインができた。

荷物を部屋に置き、食事をするために街をぶらぶら散策するが、私はあまり一人で知らない店に入って食事をしたりお酒を飲んだりするのは得意ではない。海外旅行先では平気なのだが、基本的には落ち着かないのである。

結局チェーン店のステーキ屋に入り、1,000円ちょっとのステーキセットを食べた。

ホテルに戻る道すがら、コンビニで少しの酒とお菓子を買い、部屋でテレビを見たり本を読んだりして過ごしていた。

ビジネスホテルは狭い。しかし、必要なものが過不足なく全て揃っている。日常から離れた土地のビジネスホテルで過ごしていると、何とも言えない安らいだ気持ちに浸れるのだ。

宿泊客の多くが自分と同様に一人で泊まっているというのも落ち着く理由かもしれない。シェルターに避難するような感覚で私はビジネスホテルでの時間を楽しんでいた。

 

規則正しく起きる朝

夜更かしせずにぐっすり眠った翌朝は8:00には気持ちよく目覚めた。

NHKの「小さな旅」を流しながら外に出る準備をした。

ホテルをチェックアウトし、駅前で朝食を食べ、勿来の関や勿来海岸を散策した。

勿来海岸の散策を終えたのはまだ13時過ぎだったが、十分気分転換ができたので早々に電車で東京へ戻ることにした。

本を読み、途中うとうとして眠り、気が付けばもう都内に入っていた。そして週末の一人旅が終わる。

平日は忙しく仕事をしていたが、それが嫌だったという訳ではなかった。

ただ、週末に息抜きをしっかりしなければ私の心は折れていたかもしれない。

このような週末旅に掛かる費用は、交通費8,000円+宿泊費4,500円程度だったと思う。

時は流れ、今は38歳になり妻も子どももいて週末に一人旅に行く機会はほぼなくなった。

ただ、今でも時々遠方の仕事で一人ビジネスホテルで過ごす時は、その頃の感情がよみがえってくるのかワクワクしてしまうのだ。

ABOUTこの記事をかいた人

Daily Lives代表。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影と、コンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙媒体・WEBのコンテンツ制作を行う。趣味は旅行・アウトドア・温泉。