なぜ旅をすることが大事なのか?

20歳の時に、初めて海外へ

私は子どもの頃から旅が好きだった。

夏休みや年末年始など、家族でどこかへ旅行に出掛ける経験はいつもワクワクするものだった。

そんな旅のスケールが変わったのは、20歳で初めて海外を旅した時だ。

2歳年上の兄が大学の長期休暇の間に東南アジアやインドを旅している話を聞き、大学2年生だった自分も挑戦してみたくなったのだ。

「バックパッカー読本」というバックパッカーの入門書のような本を買い、当時(2004年)海外をバックパック一つ背負って放浪するのに必要な知識を学んだ。

パスポートを取得し、HISのカウンターで東京-バンコク往復の格安航空券を買った。往路・復路共に日程が決まっており、変更は不可。行ってしまえば約30日間を現地で過ごさなければならない。

旅行前には、現金を(今はなき)トラベラーズチェックに変えたりもした。ホットメールのアドレスを持っていれば、各地のインターネットカフェで連絡が取りあえるので旅人には欠かせないということも学び、ホットメールのアドレスを使うようになった。そして、それは今でもメインのメールアドレスとして使っている。

 

タイ・ラオス・カンボジアを放浪

成田発バンコク行きのユナイテッド航空の飛行機は、夜遅くにドンムアン空港に到着した。

3月だが蒸し暑い熱気が体中にまとわりつく。熱帯の国へ来たのだ。

空港からタクシーに乗り、初日だけ予約していたカオサンロード近くの宿「NEW WORLD HOTEL」に向かった。夜遅かったので、シャワーを浴びて就寝。どんな気持ちで最初の夜を過ごしたのかはもう思い出せないけれど、ワクワク感と不安の両方を感じていたと思う。

ホテルで最初の朝を迎え、私の東南アジア一人旅が始まった。

太陽の光、空気の匂い、湿度、聞こえる音…。すべてが初めて体験する世界だった。

見知らぬ地でコミュニケーションを取り、街を歩き、食事をとり、少しずつ体と心を異国の地になじませていく。同じように旅する同世代の多くの日本人にも出会い、彼ら・彼女らとの一期一会も楽しかった。

 

世界には多様な人生があることを実感する

私は1カ月の滞在中に隣国ラオスやカンボジアも訪れ、現地の人々とふれあい、日本とは異なるあらゆるものを体感して帰ってきた。

「世界観が変わった」というのは言い過ぎだが、世界には私が思っていたよりも多様な人々が多様な人生を生きているという至極当たり前のことを実感した。例えば、「幸せ」という感覚や尺度も、地域や文化によって少しずつ違うように思われた。

実は、それこそが旅で得た最も大きなもので、その後の人生で悩むときには、その感覚をいつも思い出すようにしてきた。

たいていの悩みは、自分では気づかないが視野が狭まっている状態で起こることが多い。

今自分が抱えている悩みを遠い異国の人に説明した時、相手はどう考えるだろうか?

おそらくピンと来ないのではないだろうか?

つまり、個人の悩みなどそんなものなのかもしれないと思うのである。

 

旅をすることで得られる感覚

また、私がたくさんの国を旅行して感じたことの一つが、幸福感と所得水準が比例しないのではないか?ということだった。

例えばラオスの2004年の一人あたりのGDPは500USドル程度だった。日本円にして約5万円。しかしながら、都市部に行っても農村に行っても、多くの人々がリラックスして幸せそうに暮らしているように見えたのだ。

旅人目線で「幸せそうに見えた」というのは根拠に乏しい乱暴な考察だが、温暖な気候風土で穏やかに暮らしを営む人々の姿がそこにあったように思えた。

彼らはいい意味で“いい加減”に見えたし、そのいい加減さが他者への寛容さに繋がっていて、それがマイルドで心地いい空気を国中につくり出しているのではないか?

それで人々が不便なく生きていけるならば、それでよいのではないかと思ってしまう。

そのような感覚は旅をすることで得られるものであり、旅をしなければ身体的には理解できない感覚だと思う。

タイトルの「なぜ旅をすることが大事なのか?」の答えがそこにある。

今自分が生活している世界の常識を疑い、世界に無数に存在する常識に目を向けてみる。

複数の言語を習得するのは難しいが、旅をして複数の概念があることを知るのは簡単だ。

何かに行き詰まったと思った時、違う世界の概念ではその状況をどう捉えるだろうか?

旅をして見えるのはその土地の景色だけではない。

新しい視点を獲得し、それを未来永劫持ち続けられるのが旅なのだと思う。

ABOUTこの記事をかいた人

Daily Lives代表。1983年生まれ。企画・編集・取材・コピーライティング・撮影と、コンテンツ制作に必要なスキルを幅広くカバー。紙媒体・WEBのコンテンツ制作を行う。趣味は旅行・アウトドア・温泉。